豊崎 利幸、坂根 康英、笠井 道夫
焼成生地を介したメイラード反応による中鎖脂肪酸トリグリセロール(MCT)への影響を検討した。MCTを添加した生地を50分焼成した場合のAGE生成率は、他の油脂に比べて優位に抑制されていた。この挙動は、MCTが生地の焼成においてメイラード反応を抑制することを示唆している。焼成したパン空洞穴の断面を計測した結果、LCTおよびMCTはバターやショートニングに比べて低下傾向を示した。メイラード反応が影響を与える固体油脂と液体油脂の衝撃特性の違いが影響するかどうかを調べるモデル系を作成した。その結果、実際の焼成生地の結果とほぼ一致する結果が得られた。焼成中に進行するメイラード反応により生成されるAGEは、LCTおよびMCTによって分解されていた。一方、バターおよびショートニングではAGEの分解が抑制された。この現象から、MCTはメイラード反応を阻害することで反応の結果としてのAGEsの生成量を抑制すると推測されています。