弓田長彦、岩瀬由美子、西宏治、池田俊彦、深井俊夫、武田一義、小野寺健二、梅村真一郎、奥平一穂、百瀬康則
背景:本研究では、光化学的に活性な塩素である
4-ホルミルオキシメチリデン-3-ヒドロキシ-2-ビニル-重水素化ポルフィニル(IX)-6-7-ジアパラギン酸(ATX-S10)の存在下での超
音波によるアポトーシスの誘導を調査した。方法:HL-60細胞をATX-S10の存在下および非存在下で最大3分間超音波に曝露し、細胞形態、DNA断片化、およびカスパーゼ-3活性を分析することでアポトーシスの誘導を調べた。
結果:80μM ATX-S10と超音波で処理した細胞は明らかに膜小疱形成と細胞収縮を示したが、超音波またはATX-S10のいずれかのみに曝露した細胞では有意な形態変化は観察されなかった。また、超音波とATX-S10の両方で処理した細胞ではDNAラダー形成とカスパーゼ3活性化が観察されたが、超音波またはATX-S10のいずれか単独で処理した細胞では観察されなかった。さらに、ATX-S10と同じ音響配置の超音波との組み合わせは、細胞による一酸化窒素生成を大幅に増強した。音響力学的に誘導されたアポトーシス、カスパーゼ3活性化、および一酸化窒素生成は、ヒスチジンによって著しく抑制された。
結論:これらの結果は、超音波とATX-S10の組み合わせがHL-60細胞でアポトーシスを誘導することを示す。ヒスチジンによる音響力学的に誘導されたアポトーシス、一酸化窒素生成、およびカスパーゼ3活性化の大幅な減少は、一重項酸素などの活性種が音響力学的アポトーシス誘導に重要であることを示唆している。
一般的意義:本論文で報告された結果は実験的なものではあるが、アポトーシス誘導を用いた癌の音響力学的治療の可能性を著しく支持するものである。