村田有紀、田渕久明、渡辺利明、寺沢彩希、中島幸樹、小林敏恵、チャン・ヨン、奥原正夫、中出圭介、スチンダ・ジャルパット・マルオ、藤森里美、寺沢耕二
これまでに、認知処理にはさまざまな種類があり、それぞれ脳活動に異なる影響を及ぼすことが研究で示されている。しかし、被験者が暗算や電卓など、処理を伴うかどうかにかかわらず、同じタスクを実行する場合、脳にどのような異なる影響が及ぶのかは不明である。本研究の目的は、暗算と電卓の使用時における皮質活性化の影響が脳に異なる影響を及ぼすかどうかを調べることである。15人の健康な右利きの参加者(平均年齢26.3 ± 8.5歳、男性12人、27.7 ± 9.0歳、女性3人、20.6 ± 1.1歳)が被験者として募集された。被験者が暗算または電卓を使用して減算タスクを実行している間(各3分)、酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)レベルを測定した。測定は前頭葉と側頭葉で行われた。両葉において、暗算中にoxy-Hbレベルが有意に上昇した。暗算中に有意にオキシヘモグロビンが増加した部位は、前頭葉の前頭前野と側頭葉の上縁回であった。これらの結果は、脳が暗算と電卓の使用というタスクに対して異なる反応を示すことを示唆している。我々は、電卓の使用には暗算を行うよりも少ないニューラルネットワークが必要であるという仮説を立てた。近年、機械の発達により、多くのタスクが自動化され、我々の生活はより簡単で便利になった。我々の研究結果は、現代技術の発達が脳機能に影響を与える一例であるかもしれない。