清水恵子、大村知宏、奥田勝弘、浅利勝、塩野洋、松原和夫
欧米諸国に次いで、薬物を悪用した性犯罪(DFSA)が日本でも近年増加している。日本で起きているDFSAで最も多く使われているデートレイプドラッグはチラゾラムである。本研究では、マウスの高架式プラス迷路試験を用いて、トリアゾラムが恐怖や不安に対する行動に及ぼす影響を評価した。トリアゾラムを投与された動物(0.01 mg/kg)は、溶媒を投与されたマウス(対照群)と比較して、総運動量に有意差はみられなかった。逆に、マウスが通常不安や恐怖を感じる装置のオープンアームでの活動レベル(費やした時間、運動の平均値)は、トリアゾラムを投与されたマウスで対照群と比較して有意に増加した。しかし、プラス迷路での総運動量には2つのグループ間で差がなかったことから、これらの条件下ではチラゾラムによって鎮静が誘導されなかったことが示された。これらの結果は、トリアゾラム投与によってマウスが恐怖や不安に鈍感になったことを示唆している。彼らの防衛反応は損なわれていた。この発見は、法廷で提出された、被害者が性的暴行から逃げようとした証拠はほとんどないか全くないという弁護側の主張に対する科学的証拠であると結論付けている。さらに、この発見はトリアゾラムだけでなく他のベンゾジアゼピン受容体作動薬にも当てはまる。