上田啓司、大森弘子
B型肝炎ウイルス(HBV)が発見されてからほぼ半世紀が経ちます。感染システムや受容体分子に関する報告はあるものの、HBV受容体分子や肝細胞へのHBVの侵入機構は完全には解明されていません。そのため、真のHBV受容体の発見には至っておらず、HBVのin vitroおよびin vivoでの有用で便利な感染システムも存在せず、HBVの正確なライフサイクルやHBVが関与する関連疾患を理解することは不可能です。HBV感染システムは、エビデンスに基づいたHBV関連疾患の治療方法や手段を模索するためにも本当に必要です。そこで、レトロウイルスカプシドとゲノムを含むウイルス粒子をHBV膜タンパク質で囲んだHBV擬似型を設計し、生成を試みました。我々は、抗HBV抗体による免疫沈降法とCsCl密度勾配超遠心分離法、続いてレトロウイルス遺伝子(この場合はEGFP遺伝子)を標的としたRT-PCR法によって、この擬似型をうまく生成できたことを証明した。我々が確立したシステムはレトロウイルスゲノムの成長依存的統合に基づいて構築されているため、初代ヒト肝細胞培養システムでの感染を観察することは非常に困難であったが、HBV擬似型の生成に成功すれば、感染性に基づいてHBV受容体をクローン化する生物学的アッセイを実施できるようになり、その分離と同定が容易になる。