野本真由美
生薬である梅皮(PC)は、アトピー性皮膚炎(AD)を含む皮膚疾患の治療に用いられる漢方薬である十味敗毒湯の成分である。十味敗毒湯の皮膚に対する作用機序におけるPCの役割を理解するために、ADモデルマウスにPCを投与した。NC/Ngaマウスにコナヒョウヒダニ抽出物を2週間投与してAD病変を誘発し、さらにPCを4週間経口投与した。AD誘発1週間後(ADの急性期)からAD誘発4週間後(ADの慢性期)まで皮膚炎スコアと組織病理学的パラメータを観察した。4週間で、PC投与群の皮膚炎スコアは未投与群よりも有意に低かった。しかし、AD誘発1週間後に行われた組織病理学的分析では、PC投与マウスは未治療マウスと比較して真皮の炎症細胞が減少したわけではなく、線維芽細胞が増加した。AD誘発4週間後、PC投与マウスは未治療マウスよりも炎症細胞と線維芽細胞が少なかった。PCはアトピー性皮膚炎の急性期から真皮の線維芽細胞の数を増やすことで創傷治癒を加速させる可能性がある。