市原秀明、奥村正樹、松本洋子
目的: L-α-ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ポリオキシエチレン(25)ドデシルエーテル(C12(EO)25)、インドシアニングリーン(ICG)からなるハイブリッドリポソーム(HL)のヒト大腸癌細胞(HCT116)における光線力学療法(PDT)効果をin vitroおよびin vivoで検討すること。
材料と方法: 89 mol% DMPC、10 mol% C12 (EO) 25、および 1 mol% ICG からなる HL/ICG を超音波処理により調製した。大腸癌の皮下異種移植マウスモデルにおける PDT-HL/ICG の阻害効果をin vivo で調べた。
結果:遠赤色光レーザーを照射したHL/ICGのHCT116細胞の増殖に対する抑制効果が観察された。HCT116細胞を皮下接種した後、PDT-HL/ICGを静脈内投与した異種移植マウスモデルにおいて、腫瘍重量の顕著な減少がin vivoで検証された。in vitro蛍光顕微鏡を用いたROS検出に基づき、PDT-HL/ICG治療によるHCT116細胞における活性酸素種(ROS)の発生が観察された。PDT-HL/ICGを静脈内投与した大腸癌異種移植モデルマウスの腫瘍細胞における過酸化生成物の増加が、抗8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシン(8-OHdG)を用いた免疫染色による顕微鏡写真で観察された。
結論:ヒト大腸癌細胞を皮下接種した後の異種移植モデルにおけるPDT-HL/ICGのROS誘導治療効果が、生体内で初めて明らかにされた。