西尾洋介、鈴木智子、松井一彦、臼田嘉宏
代謝酵素をコードする遺伝子の発現の調節と制御を理解することは、微生物を用いた生産にとって重要です。調節ネットワークシステムの特定に伴う技術的な困難を克服するために、トランスクリプトームとゲノム配列データを組み合わせた DNA モチーフ検索手順を設計しました。ここでは、TCA サイクルとエネルギー代謝に関与する遺伝子を制御する大腸菌の ArcAB 2 成分システムをモデルとして使用し、遺伝子発現調節に関与する DNA モチーフを同定しました。DNA アレイデータを使用して、ΔarcA および ΔarcB 大腸菌株から上方制御された遺伝子を抽出し、上流配列を DNA モチーフ検索にかけました。配列の類似性と保存された残基から、既知の ArcA 結合モチーフと、推定 LysR 型転写調節因子である YdcI に関連すると推定される新しい DNA モチーフ候補が同定されました。 gltA 遺伝子の上流に仮説的な YdcI 結合モチーフが見つかり、YdcI が TCA 回路への炭素流入を制御する可能性があることが示唆されました。これを検証するために、ydcI 遺伝子増幅株における L-グルタミン酸生成とクエン酸シンターゼ活性が調査されました。私たちの研究結果は、YdcI が gltA およびその他の遺伝子の発現を制御し、TCA 回路への炭素流入を制御する転写因子であることを示唆しました。