吉野泰世、サブリナ・ジェスミン、マジェドゥル・イスラム、下條信武、山田武、桜本英明、沖正美、タンジラ・カトゥン、須田正人、川野悟、水谷太郎
目的: β遮断薬、特にランジオロール塩酸塩などの超短時間作用型選択的β遮断薬が敗血症における臓器保護に及ぼす影響は明らかではありません。本研究の目的は、リポ多糖類 (LPS) 投与によって誘発されたラット敗血症モデルにおける急性 (早期) 肝障害が、a) ランジオロール投与によって改善されるかどうか、および b) ランジオロールの肝障害に対する効果が、腫瘍壊死因子 (TNF)-α などの炎症性サイトカインやエンドセリン (ET)-1 などの血管収縮ペプチドの発現上昇を軽減することによって達成されるかどうかを調べることです。
方法: 8週齢の雄Wistarラット8匹に、LPS(n=12)を3時間投与するか、LPSとランジオロールを連続投与した(n=11)。対照ラットには、関連時点で治療群と同様の方法で生理食塩水のみを投与した(n=13)。
結果: LPS 投与後、3 時間で血液ガスおよび血行動態パラメータが対照ラットと比較して有意に変化しました。また、LPS 投与後 3 時間で、ALT、AST、TNF-α、ET-1 の循環レベルが有意に増加しました。さらに、LPS 投与後 3 時間で、形態学的レベルでの肝障害の重要な特徴も明らかになりました。ラットに LPS とランジオロールを併用投与すると、投与後 3 時間で肝障害が改善し、AST や ALT などの肝障害に関連する因子の循環レベルの上昇や、TNF-α の肝臓局所レベルが正常レベルに戻りました。
結論:現在の知見に基づくと、ランジオロールは、TNF-αなどの炎症性サイトカインの局所発現レベルを正常化することにより、敗血症ラットの肝障害に対する保護効果を発揮する可能性があるといえます。