柴田真帆、池田恒彦、中村公敏、加倉井圭吾、森下成太、福本政則、木田てるよ、堀江妙子、奥英洋
目的:中心窩 (網膜の光が焦点を結ぶ、光ストレスを受ける凹状の無血管中心部) に未分化の網膜幹細胞 (RSC) 様細胞が存在するという仮説に基づき、サル網膜における神経幹細胞 (NSC) 関連遺伝子の発現部位を調査した。
方法:カニクイザルを安楽死させ、両眼を摘出した。各眼を輪部付近で半切断し、平面に載せた網膜サンプルを作製した。実体顕微鏡を使用して、中心窩、中周辺部、極周辺部の網膜から 1 mm x 1 mm のブロックを切り出した。これらのサンプルを使用して、各部位での NSC 関連遺伝子 (ネスチン、PAX6、SOX2) 発現のリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応分析を行った。
結果: ネスチン発現は中心窩で高く、中周辺部と極周辺部では低かった。中心窩、中周辺部、極周辺部でPAX6遺伝子発現に差は見られなかった。SOX2発現は極周辺部で最も高く、中周辺部と中心窩では発現が低下した。
結論:ネスチン発現が中心窩で最も高かったという結果は、中心窩網膜細胞が他の部位の網膜細胞とは異なる未分化特性をより多く有している可能性を示唆している。