入江浩史、中尾喜久、金子光則、酒井圭、坂口正二
75歳の男性が進行胃癌の術前補助化学療法としてシスプラチンをベースとした治療を受けた。シスプラチン投与の3日後、患者は激しい腹痛とふくらはぎの跛行を呈した。多検出器コンピュータ断層撮影(MDCT)で、腎動脈下腹部大動脈に浮遊腫瘤が認められた。基礎にある悪性疾患とその後の開腹手術を考慮し、低侵襲治療としてフォガティ血栓除去術とそれに続くステントグラフト除去術による血管内治療を採用した。シスプラチンをベースとした化学療法は高リスクの血栓塞栓症であることが知られているが、大動脈の急性血栓症は極めて稀であり、その標準的な治療管理は十分に確立されていない。癌患者などの高リスク症例では、この処置が信頼性の高い低侵襲治療となると確信している。