平井理恵 新家、木下秀隆、牧原里英、吉岡めぐみ、小笠原敏幸
唾石は唾液腺によくみられる。今回、嚥下障害を唯一の症状として来院した患者の巨大顎下腺唾石症例を報告する。唾石の長さは24 mm、重さは4.7 gであった。術前のCTスキャンでは、健側舌骨の安静時変位が明らかになった。唾石を含む右顎下腺を全身麻酔下で摘出したところ、嚥下障害の症状は解消した。しかし、術後も変位の改善は認められなかった。嚥下障害は、大きな唾石によって舌骨の動きが妨げられたために生じた可能性がある。唾石除去後に変位した骨の安静時の位置に変化がなかったのは、唾石が長期間存在したために骨が下層組織に固定されたためと考えられる。