熊谷明子*、藤村昭、出羽康二
近年、高度な歯科治療には3次元構造の把握が必要になってきており、歯科用コーンビームCT(CBCT)は非常に有効な方法であると考えられています。本研究では、歯科記録を用いてCBCTによる個人識別の可能性を評価しました。まず、残存歯、修復物、補綴物が付いた乾燥した頭蓋骨に対してCBCTを実施し、90 Vの最高管電圧と2.5 mAの管電流で、口腔内修復物と補綴物が最適に検出され、金属アーチファクトが最大限に抑制されることを確認しました。次に、同条件で本学の歯学生が解剖実習に使用した死体の頭部に付着した軟組織のCBCTを実施しました。目視で得られたものに基づいて歯科用チャートを作成し、解析ソフトウェアを使用して構築した3D画像と比較しました。歯冠修復物や補綴物の存在が確認され、単純X線画像では確認が難しい3D形態も把握でき、目視結果とほぼ一致した。これらの結果は、開口が不可能な遺体の歯科検査においてCBCTの有用性を示唆し、身元不明遺体の調査におけるスクリーニング方法の一つとして利用できる可能性を示唆した。