小林康隆医師、富沢俊介A
【目的】脳損傷患者と同時失認の偶発的発現の臨床的特徴を調査することを目的とした。 【方法】2012年から2017年までに福井総合クリニックをリハビリテーション目的で受診した脳損傷患者のうち、同時失認を偶発的に発現した16例を調査した。大東の分類を参考に、脳損傷を注意型、知覚型、意味型の3型に分類し、それぞれの脳損傷の臨床的特徴、日常生活における症状、画像特徴を調査した。 【結果】注意型群は9例、知覚型群は4例、意味型群は3例であった。注意型群は全例右頭頂葉病変を有し、6例に半側空間無視、3例に視神経失調を認めた。知覚型群の4例全例が左側頭後頭葉病変を有し、日常生活に支障をきたすほどの処理速度が遅かった。意味型群の3例全例が高齢で脳萎縮がみられた。結論:脳損傷患者における病変分布と合併症、同時失認の併発について、脳損傷の形態別に検討した。注意型群では、右頭頂葉の片側病変が発症していた。脳損傷患者を診察する際には、日常生活動作に関する詳細な問診と、同時失認の可能性を念頭に置いた詳細な評価が必要である。