小柳 聡*、村上俊夫、中島一幸、前田敏宏、宮津義信、菅原敬心、溝上洋
アレルギーに対する唯一の根治的アプローチは免疫療法であるが、アナフィラキシーのリスクを伴う。C8/119Sは、通年性アレルギー疾患の原因アレルゲンの一つであるDer f 2の変異体であり、免疫療法におけるアナフィラキシーのリスクを低下させるために選択されてきた。本研究では、C8/119Sの物理的性質を決定し、C8/119Sの有効性をNC/Ngaマウス鼻炎モデルで評価した。C8/119Sと組み換えDer f 2(rDer f 2)を大腸菌で発現させた。精製されたアレルゲンを物理化学的および免疫学的手法で分析した。さらに、rDer f 2の経鼻投与によりrDer f 2感作NC/Ngaマウスで鼻炎を誘発し、C8/119Sを投与した。 rDer f 2 による誘発試験後、鼻粘膜に浸潤する好酸球の数を測定した。C8/119S は構造が乱れており、アレルギー患者の IgE の C8/119S への結合活性は rDer f 2 と比較して低下していた。NC/Nga マウス鼻炎モデルでは、rDer f 2 によって誘発される好酸球浸潤は C8/119S の投与によって有意に抑制された。rDer f 2 投与でも同様の治療効果が認められたが、rDer f 2 投与期間中に 20 匹中 11 匹が死亡した。一方、C8/119S 投与中に死亡例はなかった。C8/119S はダニアレルギー患者の免疫療法に有効なアレルゲンワクチンであると考えられ、野生型アレルゲンワクチンよりも安全であると考えられる。